日本の地名を遊ぶ


その1. あまりに愛想がなさ過ぎる一文字地名、土



漢字一文字の地名というのは、それほど珍しいものではない。
岐阜市の爪(つめ)とか清(せい)、山県市、前の岐阜県山県郡伊自良村の掛(かけ)とか、まあ偶然岐阜県ばかりあげているが、全国各地に漢字一文字地名は多いのである。
探してみると、長野県松本市の桐(きり)とか、東京都武蔵村山市の榎(えのき)とか、あるいは東、西、南、北なんていうのは全国各地にあるようだ。
しかし、それらの多くは、読みはひらかな二文字とか三文字である。
愛知県西加茂郡小原村には李(すもも)、神奈川県足柄上郡松田町には寄(やどりぎ)なんていうところもある。
幸(さいわい)とか、寿(ことぶき)なんぞは、どこにでもありそうな気がする。
まあ、いずれにせよ、漢字一文字でも読みは二音三音以上というのが普通である。
ところが、読みまでたった一文字というのが、飛騨市神岡町の土(ど)。
神岡町は、以前の吉城郡神岡町だが、今では、廃鉱を利用した東大宇宙線研究所の観測施設「カミオカンデ」で知られる街だ。
神岡町には他にも、谷(たに)とか西(にし)とかいう一文字地名はあるが、読み一文字はこの土だけだ。
飛騨市神岡町土(ひだしかみおかちょうど)。
あんまり、語呂が良いとは言えない地名ではある。
しかし、一文字地名は岐阜県に目立つ気がして調べてみると、岐阜県養老郡養老町に田(た)というのがあった。
濁点さえつかないから、よけいに愛想がない。
岐阜というところは、そういう地名を好む土地柄なのだろうか。
と思っていると、意外なというか、うかつなことに気が付いた。
三重県の県庁所在地、津市だ。
つ。
ひらかなで書いても、一画。
ここは知られ過ぎているため、あんまり違和感も感じさせないのだろう。
津という漢字自体は地名の要素として、そう珍しいものではないから、さらに調べてみたら、鎌倉市にも津という地名はあった。

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